柿右衛門の赤

白い磁器に描かれる魅力的な色彩。その中でも柿のような美しい赤色は柿右衛門の象徴となる赤い色です。

有田焼は昔、色が青しかなく初めて赤の色を生み出したのが初代柿右衛門です。

それ以降赤の色は柿右衛門を象徴する色となりました。

赤の色をより美しく魅力的な色にするため原料の配合や調合をし、繊細で美しい色へと磨き上げてきました。

就任した歴代の柿右衛門で赤の色は微妙な違いがあり、どの代も美しく定評があります。

その中でも十四代目の赤は最も美しいと言われています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

代々受け継がれる赤

柿右衛門窯には柿右衛門就任者に代々受け継がれる「赤の配合帳」があります。

赤の配合・調合をするのは本人にしか許されないもので、この秘伝の書は「赤絵具覚」と呼ばれています。

赤色の原料は「けそう・びいどろ・ろくはん(錆)」でろくはんを作るのが、赤の色のカギとなっているといっても過言ではありません。

水を張った大きな壺の中に10年間ほど酸化鉄を入れ、塩分を抜いて作っています。

塩分を取り切れていないと、焼いたとき白く濁ってしまい美しい赤が作れないそうです。

10年という長い時間をかけ、原料の1部を作る。一つ色を作るのにも手を抜かない、その丁寧な仕

事が長年愛され続けている柿右衛門の赤色の秘密の1つでもあると思いました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

様々な赤

一口に赤といっても、柿右衛門には様々な用途で使い分ける赤があります。

赤に黒みが強い「赤カバ」、これは輪郭などの縁を描くのに使われます。

朱色に近い「濃赤」、“だみあか”と読み、柿の実を色付けする色として使われます。

他には、鮮やかな花に使われる赤と、柿右衛門を象徴する「赤花」があります。

鮮やかな赤であればあるほど、酸化鉄と赤の粒の調合比率が重要な役割をしており、

酸化鉄の粒を小さく細かくすればするほど、鮮やかな赤が生まれると言われています。

その粒を小さくする作業「すり」といいます。

この「すり」の作業は酸化鉄にガラスなどを混ぜ、すり粒を小さくしていく作業で、

柿右衛門就任者にしかできない作業の1つです。

赤を独自の方法で生み出し、現在でも新たな赤を作り出そうと柿右衛門は歴史の歩みを止めることをしりません。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ヒントを得た柿ノ木

初代柿右衛門が赤色だすヒントとなった柿ノ木が「柿右衛門古陶磁参考館」にあります。

この資料館の裏手に藁葺き屋根の家屋が並んでおり、その傍に柿ノ木が生えています。

また、この「柿右衛門古陶磁参考館」は、江戸時代から現代に至るまでの柿右衛門窯380年の歴史を学ぶことができます。また、世界中で今も愛され続けている柿右衛門様式の焼き物文化の素晴らしさを見て、感じることもできます。

展示しているものは、酒井田家に代々受け継がれている文書と土型に加え、

柿右衛門様式の壺やお皿などの文化的価値の高い貴重な古陶磁です。

現代の作品の十二代目から十四代目の代表作も見ることが可能で、柿右衛門愛好家から初めて柿右衛門に触れる方まで幅広い方が満喫していただける資料館です。