有田焼は日本でもっとも古い磁器であり、400年という長い歴史を持っています。
透き通るように白く、美しい磁肌、青を基調とした華やかな絵付け、その上、
耐久力に優れているという特徴を持った陶器が有田焼です。
その特徴は、多くの人々の手によって守り続けられており、一つの器が出来るまでには長い制作工程があります。
制作の過程は、新しい技術革新によって、制作は徐々に機械化されてきて変化してきていますが、採石、成形、施釉、絵付け、焼成までと多くの制作過程に焼き物に対する多くの人々の愛情と職人技が結集されています。
有田焼の制作過程をご紹介いたします。
有田焼の原料は白く、堅く、吸収性の低い、陶石と呼ばれる石です。
1616年に有田町にある、泉山で陶石が発見されてから400年もの長い期間採石が続けられています。
磁石場は長い歴史のなかで、山のほとんどを掘り尽くされ、今では白い磁肌を見せながら
大きく扇状に広がってきており、大正時代以降は、熊本県天草産の陶石を用いることが多くなっています。
土により、出来上がる磁器は大きく違い、単独の陶石だけで磁器がつくれるのは、
世界でも、この泉山陶石と天草陶石のみと言われている貴重な陶石になり、
この陶石によっても有田焼は支えられているといっても過言ではありません。
※泉山陶石と天草陶石では、天草陶石のほうが鉄分が多いという特徴があり、
鉄分の多い陶石からつくった磁器は、焼成すると色が曇ったり、黒点が生じやすくなるという問題点がある反面、
硬く、濁りがなくて美しい色の磁器が焼きあがるという傾向があります。
粉砕
それそれの地域から採掘された陶石は、クラッシャーという機械を用いて粗く砕き、
スタンパーという機械によって、さらに細かく砕いて粉末状にしていきます。
急激に粉砕すると、陶石が熱を持ち、成形する時に必要な粘り気を失ってしまうという
傾向があり、この作業には、ゆっくりとした、長い時間が必要です。
水簸
粉砕によって、粉末状にした陶石を、さらに細かくしてから、水の入ったタンクの中で、
十分にかき混ぜていきます。
沈殿する砂利や粗粒を取り除いた後、水槽に移し、ゆくっり時間をかけ泥漿と上澄み液を
分離していきます。
製土
沈殿が終わった後の泥しょうをフィルタープレスという機械を用いて圧縮することで、
余分な水分を取り除き、四角い陶土板を作成していきます。
上記でやっと、制作の陶土工程が終了し、いよいと成形工程に移っていきます。
土こね
土こねは陶土の中の粒の粗密を均一にし水分の濃密を平均化し、陶土内の空気の気泡を完全に取り除くために
手仕事で丹念に行っていきます。
土こねを丁重に行わないと、焼成後『割れ』や、『歪み』の原因になってしまいます。
成形
形作る制作工程の中で、最も重要な工程が成形であり、作成するものの大きさや、用途、
機能性に応じて、それぞれロクロ成形や手造り、型成形、いこみなど様々な技法を用いて
生乾きの成型品の状態にしていきます。
この生乾きの成型を生素地(なまきじ)といいます。
生素地はとても脆く、慎重に触れないと、割れたり欠けたりしてしまうので、
熟練の技術が必要な工程になります。
生素地の状態で、生地表面の加飾、器の表面などを行います。
乾燥
皿板に並べ、かげぼし、天日乾燥など、それぞれに応じた乾燥を行っていきます。
乾燥工程においても、急激に行うと、乾燥収縮時に亀裂が生じるので、
時間をかけ行っていきます。
素焼き
さらに水分を抜き、堅く引き締まった素地にするため窯で、徐々に温度を上げていき
約900度の低温でじっくりと焼いていきます。
下絵付
素焼きされた器の表面に酸化コバルトを主成分とする呉須で描いていきます。
吸収力のある素焼の表面に直接描いていくため、かなりの熟練の技術が必要な
工程です。この工程での有田焼の職人のかたの運び筆、筆致で作品の優劣が決定すると言われています。
有田焼の特徴である藍色を加えていく工程となります。
藍色の濃さは実は、水で調整していくそうです。
施釉
釉薬を一面にむらなくかけます。
釉薬とは、磁器表面の薄いガラス質のことで、長石、石灰石、硅石、柞石などを
精製して制作するそうです。
釉薬をかけることで、磁器表面につやが出て水を通さなくなり、汚れが付きにくくなります。
ただ、釉薬を一面にかけたまま素焼きを窯の中に入れ焼成すると、釉薬と棚板がくっついて
外れなくなるので、高台についている釉薬をスポンジで拭き取る作業が必要になります。
施釉後は十分に乾燥していきます。
本焼
1300度ほどの高温で10時間以上をかけて焼き上げていきます。
高温で焼成することにより、磁化させ、磁器独自の透き通る白が現れます。
紺のみの染付と呼ばれる磁器は、この本焼の制作のみで完成します。
赤絵付
本焼で焼きあがった陶磁器にさらに赤・緑・黄・金など、紺色以外の絵の具を加えていきます。
白磁に紺色のみで上絵付したものに赤絵、染付で下絵付したものに上絵付したものを染錦といいます
赤絵窯
加えた絵柄を定着するために720℃~830℃の低温度で焼き付けていきます。
完成
以上のような長い工程の多くの熟練の職人のかたの手により、
私たちを魅了する有田焼は制作されています。
400年という長い歴史に思いを馳せ、制作の過程を感じながらお気に入りの有田焼を眺めると
器への愛情もより深いものになっていきます。
※お話を聞いた中での制作方法なので、窯元やメーカーによって異なると思います。