手描きではなく、判や印刷によって模様を施す装飾法で、同じ図柄の器の量産する際などに使用される技法で作成された磁器のことをいいます。手描きに比べると、比較的安価に生産が可能です。
この印判技法により、同一絵柄が簡単に多量に製作できるようになり、一般庶民にも有田焼の磁器製品を気軽に楽しめるようになりました。
この技法自体は中国の景徳鎮窯で開発されたもので、現代にも受けつがれている技法になります。
種類は下記のようなものがあります。
1 コンニャク印判(いんばん)
湾曲した器物にプリントするためのの技法です。実際コンニャクに文様を彫ることなど無理なので、動物の皮などの柔らかい素材を使い、文様を作品にプリントしていきます。
この印判で作成された器は、図柄がぼやっとした感じであり、スカッとした仕上がりを求める場合は不向きな技法になります。
2 型紙摺絵(かたがみすりえ)
布染めなどに使われる型紙を使って、プリントする技法です。柿渋のようなもので防水処理をした紙に文様を彫っていき、それを作品に押し当てて、上からブラシで染料をこすりつけて絵柄を出す技法です。
江戸の元禄時代からある技法ですが、近世では肥前志田窯に明治4年の資料があります。
この技法で作られた作品を見分けるポイントは線状の文様が短くいくつもに途切れる点です。これは、長く切ると紙型が保たれないために生じるものです。また平面的な版を湾曲した器面に文様をすり込んでいくため、版がズレていることが多いです。
3 銅版転写(どうばんてんしゃ)
エッチングの技法で、肥前大樽(現在の有田町)の牟田久次が明治19年に始めた技法になります。その後、急速に京都や多治見などに広がっていきました。銅版画の技法=エッチングの技法を応用した技術になります。松ヤニをあぶりつけた銅版に絵柄を削り付けて、それを腐食剤に浸し、腐食させた版に大量に化学的に生産されていたベルリン藍(当時大量生産され安価になった化学呉須)を使って、銅版から紙に絵柄を転写してそれが乾かない内にさらにまた器物に押し付けて転写する方法です。
鑑定ポイントは型紙摺絵とは反対に、線が途切れることがないことです。この技法を使うと細い繊細な線がきれいに描けます。逆に、ベタ刷りが出来ないため、線をできるだけ密接に深く太く描くことでその欠点を補っています。
4 ステンシル 紙摺吹墨(かみずりふきすみ)
これは型紙摺絵の紙型に、染料を吹き付けて文様を出す技法です。この技法が中国明末期の景徳鎮で始められたものになります。いわゆる吹墨の技法といわれる技法と同じものになります。