“有田焼の故郷・佐賀県。その街並みを知ることで、有田焼への理解をさらに深めることが できるでしょう。どのような土地で伝統工芸が育まれてきたのかを解説いたします。

有田焼の故郷・佐賀

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佐賀県は大きく二つに分けることができます。ひとつは北部の唐津市を中心とした旧唐津藩の地域、もう一つは佐賀氏を中心とした旧鍋島藩の地域です。有田は鍋島藩に含まれていました。江戸時代、西洋との唯一の窓口であった長崎に近く、輸出品の生産・取引によって藩の財政を支え、主力貿易品として有田焼が発達したのです。

有田町は山に囲まれた細長い市街地を中心としている土地。有田焼は日本初の磁器ということもあり、鍋島藩は有田の地を半ば秘密にしていました。有田町の町並みには、そんな事情もうかがえます。

 

有田町の観光ポイント

SONY DSC有田焼の故郷である有田町には、陶芸に関連する観光スポットが多くあります。

まず、有田焼の原料である磁石を採掘していた泉山採石場があります。配合の必要がないほど良質の磁石が採れた採石場で、大量の磁石を掘りつくしたというのが一目でわかる景観です。むき出しの岩肌と周囲の山とのコントラストが奇妙な雰囲気を持っています。

近くには有田町歴史民俗資料館があり、有田焼の歴史的資料が多く展示されています。また、有田陶磁美術館には有田焼の名品が展示されています。

有田焼の窯

pixta_92944_S有田地方には多くの名品を生み出してきた窯跡があります。有田の陶祖とされる李参平ゆかりの窯跡、天狗谷窯跡は、斜面に作られた登り窯の様子が良くわかり、有田焼草創期の様子がしのばれます。李参平は和名を金ヶ江三兵衛と名乗りました。天狗谷窯跡の近くには墓碑があります。また、彼は陶芸の神として陶山神社に祀られています。そして、現在も生産を続けている窯では、作品の展示・販売も行われています。

柿右衛門様式の総本山が柿右衛門窯です。戦後に復元された濁手の技法を駆使した磁器が作られており、伝統的なものから意欲的な新作まで、多くの作品にふれることができます。江戸時代に作られた古伊万里の作風を色濃く残している窯として、源右衛門窯があります。広い敷地の中に窯や作業場が配置されています。直営店やギャラリーでは伝統的な作風で作られた日用品が多く並んでおり、実用にも耐えうるデザインを持つ有田焼の良さを伝えています。

伊万里の風景

pixta_9263992_S有田焼は、鍋島藩の玄関口である伊万里港から日本中、世界中へ運ばれていきました。そのため伊万里焼とも呼ばれ、伊万里市には関係する観光スポットが多くあります。たとえば、歴史民俗資料館やギャラリーがあり、有田焼の名品が展示されています。伊万里港をのぞむ伊万里川の河口にかかる橋、伊万里津大橋には高さ1.5メートルの大壺が飾られており、伊万里を通じた貿易の繁栄を偲ばせています。

貿易が栄えた陰で、有田焼を支えた朝鮮半島から来た陶工たちを供養する、無縁墓標を集めた供養塔もあります。880余基の墓標がピラミッド型に配置され、苔むした姿は陶工たちの苦難を感じさせ、厳粛な気持ちさせてくれるでしょう。

また、伊万里の山間には、鍋島焼の故郷もあります。色鍋島を現代に受け継ぐ今右衛門窯は、伝統的な色鍋島だけでなく、吹き墨などの新しい技術も取り入れた作品が多いです。鍋島焼の多くは、大川内山で作られています。石畳の坂道の両側に煙突が立ち並ぶ風景は、鍋島藩によって秘密とされた陶工の隠れ里の雰囲気を残していますが、ここは春に「春の窯元市」、秋に「鍋島藩窯秋祭り」と陶磁器のイベントが催され、多くの愛好家が集まる場所です。会場となる鍋島藩窯公園は広い敷地に古窯跡などの歴史的文化遺産、磁器変で作られた大壁面やオブジェが有名。近所には陶片を貼り付けた鍋島藩窯橋があります。また、鍋島焼を秘密の技術とした鍋島藩の厳しい管理を伝える関所が復元されています。

有田の特産品

有田では有田焼の他に、はがくれ牛という西有田産佐賀牛や、ありたどりといわれるブロイラーが飼育されています。町のほとんどが山地であることから、川魚料理や棚田米も特産品です。豆乳に葛やでんぷんを混ぜて作る変わった豆腐、ごどうふも有名です。中国人から葛を使った豆腐の作り方を教わったことが始まりという起源からも、有田焼と同じ中国からの文化の影響を感じる食べ物です。

伊万里へ伊万里の特産品

有田焼が世界に旅立つ玄関口として知られる伊万里にも独自の特産品があります。上質の肉牛として知られる伊万里牛の他に、山間で作られる伊万里梨、巨峰、伊万里みかんが有名です。梨を使った梨ワインも特産として知られています。

また、伊万里湾の自然の入り江を利用した車エビの養殖も盛んです。沿岸部では製塩施設があり、波浦の塩としてブランド化されています。1716年に創業された酒造会社、松浦一酒造は、生産される日本酒よりも、先祖代々「珍しいものがある」という言い伝えのとおりに50年前建物の改装中に発見されたという河童のミイラで知られます。お参りをすると子宝に恵まれるということで、全国から多くの観光客が訪れます。また、伝統的な酒造りの道具が蔵に展示してあり、こちらも見学ができるスポットです。”