有田焼 陶器“有田焼の施設である窯元や、展示場はやはり佐賀に数多くあり、どこも有田焼の伝統や  歴史を感じる場所となっています。また、東京都内にも有田焼に関連した施設はあります。

 

 

 

最初の有田焼の施設

有田焼は日本初の磁器として、多くの技術が生み出されてきました。最初に磁器焼成の技術を伝えた李参平は、天狗谷に登り窯を築きました。登り窯は斜面を利用して窯を連ね、燃焼ガスの対流を利用して焼成温度を一定に保つ構造の窯です。天狗谷は川沿いの斜面で山に近く、水と薪が豊富であったことから登り窯に適していました。幅は最大8メートル、長さは50メートル以上もあったそうです。

 

現在の有田焼の窯OLYMPUS DIGITAL CAMERA

今では登り窯はほとんど使われません。窯の燃料はガスや電気が多いですが、昔ながらの薪を使う窯もあります。焼成は何度も行われ、成形した後におよそ900度の比較的低い温度で素焼きを、絵付けをした後釉薬をかけ、およそ1300度の高温で本焼成をします。色絵の場合は上絵付けをして700度から800度の低温で上絵焼成をして完成です。

伝統を伝える窯元OLYMPUS DIGITAL CAMERA

有田焼の窯元として、伝統の技法を伝える窯元はいくつかあります。代表的なものとして、源右衛門窯があります。260年以上の伝統があり、古伊万里の伝統を今に伝えています。広い敷地の中に作業場や窯が設置された大きな施設です。
皿や壺だけでなく、ティーカップなどの西洋食器、軸が陶器製の万年筆など、新しい製品開発にも力を入れています。香蘭社も300年近くの歴史を持つ名窯です。明治期に万国博覧会に作品を出品し、万国博覧会の伊万里を牽引しました。また、食器などの伝統的な磁器だけでなく、碍子などの工業用製品の背像も手掛けています。

柿右衛門様式を今に伝える柿右衛門窯OLYMPUS DIGITAL CAMERA

濁手と呼ばれる独特の白い素地と、鮮やかな赤が特徴的な絵付で知られる柿右衛門様式の伝統は、柿右衛門窯で受け継がれています。のどかな農村の中にある風格あふれる工房は広く清潔で、伝統を守る職人たちの気概が感じられます。一時期は途絶えてしまった濁手の技法もここで復元されました。
窯は薪を燃料としており、原料も泉山の陶石を使用するなど、有田焼の原点に返る試みや研究が今も行われているのです。展示場では、ここで作られた名品も数多く展示されています。柿右衛門窯は、無形重要文化財にも指定されています。

鍋島藩窯様式を今に伝える施設OLYMPUS DIGITAL CAMERA

鍋島藩によって厳重に管理された鍋島藩窯様式の窯は、伊万里市の大川内山にありました。現在でも多くの窯があり、たくさんの煙突が見られます。鍋島藩窯公園には古窯の跡が展示・公開されています。
さて、鍋島焼が作られたのは大川内山ですが、絵付けだけは有田の赤絵町で行われていました。絵付けの伝統はそれぞれの工房のいわば企業秘密であり、鍋島藩主に具申書を提出してまで移動を拒んだという逸話があります。その赤絵屋の中心であったのが今泉今右衛門家です。
明治になり、廃藩置県で鍋島藩がなくなり、藩窯が廃止になってしまった時、鍋島藩窯様式の伝統を絶やさないように立ちあがったのが今右衛門家です。それまで絵付けしか行っていなかったところを、苦心して成型から焼造まで一貫生産する体制に変えていったのです。他にも継承が途絶えていた墨はじきという白抜きの技法を復元したり、全体を霧吹きで薄く染め付ける吹き墨の技法などを駆使したりして、伝統的な鍋島焼の魅力を表現しています。さらに、墨色の絵具を使用した薄墨の技法や、プラチナを使用したプラチナ彩など、新しい鍋島焼の開発にも余念がありません。直営店も併設されており、作品を購入することもできます。また、有田陶器市などのイベントも定期的に開催しています。

 

有田焼の名品を展示する施設OLYMPUS DIGITAL CAMERA

有田焼の故郷、有田町と伊万里市には有田焼の名品を展示する施設がたくさんあります。
まず、佐賀県立九州陶磁文化館では、古伊万里の歴史的名品を展示しています。鍋島染め付鷺文三ツ足鉢は、鍋島藩窯様式の逸品であり、国の重要文化財に指定されています。また、476点もの柴田氏のコレクションが寄贈、展示されています。
有田町歴史民俗資料館では作品展示の他に、古伊万里を生産していた江戸時代の生活風俗が良くわかる展示があります。有田陶磁美術館は明治時代の陶磁器倉庫を利用した建物で、有田磁器創業当時の資料や古伊万里、柿右衛門、鍋島焼の名品が展示されています。
窯元が運営する展示施設としては、香蘭社の流れをくむ深川製磁の工場に併設されたチャイナ・オン・ザ・パークがあります。展示施設では深川家秘蔵のコレクションが展示されています。
今右衛門窯に併設された今右衛門古陶磁美術館では、古伊万里、鍋島藩窯自時代の名品だけでなく、近世以降の歴代今右衛門の作品を展示しており、鍋島藩窯様式の歴史が良くわかります。

有田焼 花瓶

東京都内の有田焼コレクション

東京で有田焼の展示が充実しているのはサントリー美術館です。大皿や酒器などの古伊万里の名品や、一般には流通することがなかった鍋島藩窯の名品が展示されています。根津美術館では、有田焼の他に古代中国からの陶磁器の名品が揃い、陶磁器の歴史とその発展を知ることができます。”